建設ロボットとは、操縦者が乗車することなく作業できるロボットです。安全性を確保しながら作業できる方法として、主に建設現場で使用されています。
この記事では、建設ロボットの概要から導入が進む背景、メリット、課題、種類まで詳しく解説します。
建設ロボットとは
建機は、基本的には人間が操作するのが一般的です。
特に、大型の建機の場合は常に人間が操作して、安全性を確保しながら対応する必要があります。
ただし、現場によっては作業員の身に危険が及ぶ場合も多いです。
例えば、災害現場で作業する場合、いつ二次災害に巻き込まれるか分かりません。
そこで、安全性を確保しながら作業できる方法として誕生したのが、建設ロボットです。
建設ロボットとは、主に建設現場で使用される機械の中で、操縦者が乗車することなく作業できるロボットのことです。
建設ロボットは、正確には、以下のように定義されています。
「建設施工・調査の現場で用いられる機械・機器に、何らかの新しいメカニズムや制御・情報処理の機能を付加することにより、作業の支援や、自動化・遠隔制御化を実現し、効率、精度、安全 などの性能向上・課題解決を可能にする技術」
引用:国土交通省「建設ロボット技術」
技術の進化により、多くの建設ロボットが登場しており、導入される機会が増えています。
導入が進む背景
株式会社グローバルインフォメーションが販売している、市場調査レポート「建設用ロボット:世界市場の展望(2021年~2028年)」によると、世界の建設用ロボットの市場規模は2021年の1,176億9,000万米ドルから、2028年までに3,954億2,000万米ドルに達すると言われています。
日本だけでなく、建設ロボットは世界的にも需要が高く、市場規模は10年後には3倍にも達する勢いがあります。
日本の国土は、気象や地形、地質等の環境がとても厳しく、毎年のように水害や土砂災害などの自然災害が発生しています。
また、地震や火山噴火が発生しやすい地域にあり、活発な火山活動に伴う広域的、大規模な土砂災害も発生しています。
このような状況下でも、国際競争力を維持するために、災害被害からより迅速に復旧することが求められているのです。
また、日本の社会資本ストックは今後急速に老朽化が進展して、戦略的な維持管理や更新が課題となっています。
さらに、建設産業では以下のような問題が指摘されている状況です。
• 施工効率の向上
• 熟練技能者不足の解消
• 危険作業の解消
他にも、日本では少子高齢化なども問題となっています。
以上のような課題の解決に向けて、抜本的な改善提案の構築とその実行に取り組むことが求められています。
そこで、建設ロボットにかかる期待が高まっており、導入が進んでいるのです。
様々な用途で建設ロボットが使用されており、近代化プロセスにおける市場機会が生み出されています。
過去から、雲仙普賢岳における遠隔操作型建機、地下トンネルにおけるシールド掘削機の自動操縦などが開発されてきました。
また、東日本大震災の発生を契機として大規模災害に備える気運が高まっており、近年建設ロボットのニーズが高まっていました。
他にも、自動操縦を実現するための技術の進化があった点も無視できません。
以上から、建設ロボットは近年多くの機械が登場し導入事例も増えており、さらに今後も導入が加速すると見込まれています。
建設ロボット導入のメリット
建設ロボットを導入するメリットとしては、作業員の安全性を確保できる点が挙げられます。
災害現場では常に二次災害のリスクがあり、作業中に災害に巻き込まれる可能性は否定できません。
そこで、建設ロボットを導入して遠隔操作すれば、仮に災害が発生した場合でも作業員の安全を確保できます。
また、福島第一原発で放射線の線源調査を担当するRosemary(ローズマリー)のように、人間が立ち入ると放射能を浴びるような環境でも、建設ロボットであれば作業可能です。
他にも、高齢の方や女性でも操作しやすいため、誰でも働きやすい環境を整えられるメリットがあります。
建設ロボットの導入では、生産性の向上も期待できます。
人間の場合は24時間働き続けることは困難ですが、建設ロボットの場合は24時間稼働させることも可能であり、生産性の向上に繋げられるのです。
建設ロボットの導入費用はかかりますが、人件費の低減によるメリットも大きいです。
建設ロボットの場合、精密作業となる場合に安定して作業できる点もメリットとなります。
例えば、作業員の熟練度に頼っている作業がある場合、人によって品質がばらつく可能性があります。
そこで、建設ロボットを導入すれば作業精度を安定させて常に高い品質を確保できる点が魅力的です。
建設ロボット導入の課題
建設ロボットを導入すれば、多くのメリットがある反面、課題も少なくありません。
建設ロボットを導入する際の大きな課題は、導入コストの問題です。
一般的な建機と比較して、建設ロボットはより高価で初期的な費用がかかります。
最終的には人件費の削減につなげられる場合でも、初期コストが高いと中小の業者が手軽に導入できません。
また、建設ロボットを自社開発する場合はなおさらであり、莫大な研究開発コストがかかります。
特に、建設ロボットでは一般的な建機以上に、安全性の確保が課題となります。
ロボット操作する場合、操作ミスが大きな事故を発生させる可能性があるのです。
そこで、万が一の事態に備えて事故が発生しない、発生したとしても被害を最小限に抑えるような安全装置の導入が必要です。
研究開発の時点でも、様々な安全装置の導入が検討され、安全性を確保した上で製品化する形となり、その分だけ費用が多くかかります。
さらに、導入した後でも安全対策に対して投資が必要となり、他にも安全に操作できる作業員の育成も必要です。
以上により、一般的な建機を導入するよりも費用がかかってしまう傾向があります。
また、ロボットを操作できる作業員の育成だけでなく、管理者の育成も必要となるため、人材育成に関する費用がよりかかってしまいます。
建設ロボットはまだまだ発展途上の技術となり、チョコ停発生により思うような成果を得られない場合もあるので、注意してください。
さらに、結果として人間には及ばない作業も発生する場合もあるため、今後の技術開発が期待されています。
建設ロボットの種類
建設ロボットは、各メーカーで多く開発されています。
ここでは、主な建設ロボットについて、特徴などを紹介します。
鉄筋の自動組み立てシステム 三井住友建設
鉄筋コンクリートの鉄筋組立は、従来は作業員による組立がメインでした。
組み上がった状態の鉄筋はとても美しく、芸術品とも言えます。
ただし、人の手によって作業するのはとても大変であり、自動化が望まれていました。
そこで誕生したのが、三井住友建設が開発したロボタラスⅡです。
ロボタラスⅡでは、鉄筋の自動組み立てシステムとなり、ロボットアームの先端部に3次元カメラを搭載し、鉄筋を結束する際にプログラミング位置との配置誤差を認識、補正して確実に結束できます。
ロボタラスⅡを導入したことにより、鉄筋総重量の換算で約85%の作業を自動化に背移行しました。
具体的には、従来6人がかりで1日2枚組立てていた作業を、2人でできるようになったのです。
溶接ロボット 清水建設
大点建築会社である清水建築では、古くから建設ロボットの開発を進めていました。
現在も、次世代建築生産システム「Shimz Smart Site(シミズ・スマート・サイト)」の開発を続けています。
Shimz Smart Siteの中でも特に注目されているのが、全自動溶接ロボット「Robo-Welder」です。
Robo-Welderは、コラム柱を2台のロボットが対称に移動して溶接する機構を採用しています。
専用の走行台車上にセットしたロボットを所定の位置まで誘導して、作業員の介在を受けることなく完全自動溶接を実現可能です。
溶接作業には危険性を伴いますが、Robo-Welderでは安全に作業できる点に注目が集まっています。
施工ロボットの開発
施工ロボットの開発も、多くの会社で進められています。
2021年には、鹿島建設と清水建設、竹中工務店の3社が、新規施工ロボットの共同開発や既存ロボットの相互利用を促進するため、ロボット施工とIoT分野での技術連携に関する基本合意書を締結しました。
この取り組みによって、さいたま市のJR大宮駅付近で工事が進んでいる大宮桜木町1丁目計画では、天井施工ロボットの導入によって、従来の人による作業の約半分を人と同等の品質で施工できるようになりました。
また、横濱ゲートタワーの施工現場では、耐火被覆吹き付けロボットによって現場にロボットを配置して作業前にスキャンするだけで施工できるようになり、準備作業の大幅削減を実現しています。