建設DXとは?必要とされる背景や課題、メリット、導入事例を解説

建設現場が抱えるさまざまな課題を解決するための画期的な取り組みとして、建設DXを導入する企業が増加しています。建設DXとは、最新のITテクノロジーや技術を導入して、現場作業員が少しでも快適に作業できたり、そもそも人員を削減できたりする仕組みづくりのことです。

この記事では、建設DXの概要から必要とされる背景や課題、メリット、導入事例を詳しく解説します。

建設DXとは

建設DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、最新のITテクノロジーや技術を導入して、現場作業員が少しでも快適に作業できたり、そもそも人員を削減できたりする仕組みづくりのことです。建設現場ではこれまでにたくさんの建設DXが導入されており、少しずつ労働環境が改善されてきました。

建設DXを導入することで、業務のプロセスがそもそも適切かどうかを見直すとともに、目的が達成されるまでのプロセスの最適化が期待できます。建設DXは建設現場が抱えるさまざまな課題を解決するための画期的な取り組みといえます。

DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略語で、最新のAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて課題を解決したり、良い方向に導いたりするための手法を確立させることです。さらに、業務フローの最適化はもちろんのこと、これまでに培ってきたやり方を一変させてさらに業績を伸ばしたり、そもそもの企業風土を変えたりすることもあります。最新のデジタル技術を用いてこれまでの常識や概念を覆す、革新的、革命的な取り組みです。

現場DXとは

現場DXとは、デジタルトランスフォーメーション、すなわち最新のデジタル技術を用いて、老朽化した建物をがらっと変えて再利用したり、人々が生きていくうえで必要なライフラインを復旧させたりする取り組みのことを指します。さらにそれだけにとどまらず、災害対策への対応や工事現場の作業など、多くの人が必要な場面でデジタル技術を用いて動く人々の効率化を図り、建設現場や災害現場などの労働力の生産性を向上させることができます。その結果、自社もより成長していくという好循環を生み出せるのです。

住宅DXとは

住宅DXとは、同じく最新のデジタル技術を使ってより業務の効率化を測り生産性を向上させることです。具体的な方法として、社内マニュアルを作成・強化したり、紙媒体をペーパーレス化してデジタル媒体に変えたり、事務作業の際に便利なツールを導入するなどがあります。また、住宅業界を俯瞰すると、人手不足の会社や組織も多く見られます。人手不足問題も、住宅DXを利用すれば人員の効率化を図れて問題解決にも役立ちます。

建設DXの背景・課題

建設DXが必要とされる背景や課題は主に次の3点です。ひとつずつそれぞれ解説します。

長時間労働

建設現場では、長時間労働が大きな課題として挙げられています。夏の暑い現場や冬の寒い現場など、過酷な環境下での長時間労働は、労働者への負担もとても大きく、早急な改善も必要です。また長時間労働をしていると身体への負荷も大きく、怪我に繋がるリスクも高まります。さらに、2024年4月より建設業界にも時間外労働の上限時間を制限する「働き方改革関連法」が適用されるため、建設DXの必要性がより高まっています。

高齢化と人材不足

建設DXを早急に導入するべき大きな理由の一つが、建設業界全体を通した高齢化と人材不足です。長年建設業界を引っ張ってきた、働いてきた人たちがどんどんと年齢を重ね、高齢化しています。職人の技術を引き継ぐ若手がいないことも珍しくありません。さらに、建設業界は力仕事が多く労働時間も長いため、他の業界と比べてかなり過酷で大変というイメージが付いており、建設業界を志望する人が少なく、人材不足も深刻な問題となっています。だからこそ、早く建設DXで解決を図ろうという動きも活発化してきています。

労働生産性

建設現場は一般的に労働生産性が低いと言われています。基本的には今までは人が資材を運んでいって、組み立てるといった人工的な動きが多く、労働力に対してなかなかスピーディーにものごとが進んでいかないという課題もありました。加えて手作業で行う工程も多く、一つひとつ丁寧に仕事をこなすためには機械ではなくやはり人がやらなければならない作業も多くありました。しかし現代では技術の進歩も進み、建設DXを利用してAIやデジタルでできるところは人が動かなくてもできる仕組みが整備されつつあります。結果として、少しずつではありますが労働生産性も向上しています。

建設DXのメリット

続いて建設DXを導入するメリットをご紹介します。導入することで得られる主なメリットは3点です。
順番にご紹介します。

業務の効率化

建設DXを導入することで得られるメリットの一つ目が、業務効率化です。具体例として、これまで人工的に書いていた図面や設計図などを機械に任せたり、測量データを図ったりなどの業務が素早くより正確になります。また、これまで対面で行っていた会議もオンラインに移行することで移動する時間と手間が省けます。さらに、一度作成した図面や設計図などはデジタルデータでオンライン上で保管されるため、紙媒体で印刷する必要が省けて金銭面的にも節約になります。再び使用するとき、紙媒体ではないのでなくしてしまった、なんて心配も無用です。

人材不足の解消

建設DXを導入する2つ目の大きなメリットが人材不足の解消です。これまですべて人が操作していた機械などを、例えばリモコン一つで遠隔で操作できるようになれば、操作も簡単で覚えれば誰でも利用できるようになります。そうなれば特別なスキルは必要なく、人材不足の解消につながります。また、建設現場や工事現場などでの材料の確認や施工の際のミスの確認なども、機械に任せることで作業自体の工数を減らすことができます。機械に任せられる作業は人が入らずデジタル化させることで、建設業界全体で叫ばれている人材不足の問題を解消できるのです。

技術の継承

建設業界で長く務めてきた職人たちの技術を継承する人が少なくなっているという課題がありますが、建設DXを推し進めることでこれらの課題を多少解決できる可能性があります。
建設業界の不人気から、業界全体で高齢化が進んできています。建設DXでは、熟練者が持っているスキルをデータとして保存できるため、若い人材が見つかったときにそのスキルをデータでシェアすることが可能です。データで残して共有すれば、熟練者が若手に直接指導をしなくて済むため時間短縮、つまり業務の効率化にも繋がります。機械、つまりAIで技術を残すことで熟練者の技術やノウハウを後世まで大切に保管しておけるのです。

建設DXの導入事例

実際に建設DXが導入された会社の事例を3つご紹介します。

清水建設株式会社

建設DXが導入された事例のひとつが、清水建設株式会社です。清水建設株式会社は経済産業省と東京証券取引所が共同となって選定する、企業価値の向上につながるデジタルトランスフォーメーションを推進するための仕組みを作り、デジタルトランスフォーメーションを活用して優秀な実績を残した企業に送られる「デジタルトランスフィーメーション銘柄2022」に選定されました。

導入事例として、建設内の設備やIoTデバイス、さまざまなアプリを手軽に連携したり制御したりできる建物運用化デジタルプラットフォームの機能を搭載した建物OS(オペレーティングシステム)「DX-Core」を開発しました。

DX-Coreは例えるならば、パソコンです。建物自体がパソコンのような役割を担い、それに関連してさまざまな設備機器などをプラグインのような感覚で導入していきます。そうすることで、簡単に最新バージョンにアップデートでき、利便性が上がり、常に最新の機能を搭載できるのです。

鹿島建設株式会社

鹿島建設株式会社も、建設業界のなかでは建設DXの導入に最も力を入れている企業のひとつです。デジタルを利用して建物の仮想竣工や仮想運用を実施し、完成までの生産性をアップしたり、顧客へよりリアルで再現性の高い提案ができたりします。また、建設DXを駆使してさまざまな業務の効率化を図るのはもちろん、自社で長く務めてきた職人のノウハウや技術をデータとして保存し、次世代に引き継げる仕組みづくりなどに務めています。

ダイダン株式会社

ダイダン株式会社が取り組んでいる建設DXの事例は大きく分けて2つあります。まず1つ目が、リモート化の導入です。多様な働き方が推進されている現代、国内外にさまざまな工場や従業員を抱えています。そのため、直接現地を訪れることなく指示や情報をシェアできるように、Web会議システムや全社員共通のCADシステムなどを積極的に活用しています。
2つ目に、クラウド型ビル監視制御システム、「REMOVIS(リモビス)」の導入です。リモビスとは、現地にいなくてもクラウド上でビルの監視ができるシステムのことを指します。これにより、監視者は現地に足を運ばなくてもビルの電気エネルギー消費量を確認したり、各設備の稼働状況をチェックできたりするため、効率的にビルの管理が可能となります。