建築CAD検定試験とは、CAD(コンピュータ設計支援システム)を用いた建築図面設計の技術力を認定するための民間資格試験です。
この記事では、資格を取得するメリットから建築CAD検定試験の難易度、勉強時間の目安、勉強方法まで詳しく解説します。
建築CAD検定試験とは?
建築CAD検定試験とは、CAD(コンピュータ設計支援システム)を用いた建築図面設計の技術力を認定するための民間資格試験です。本試験は実務レベルのCAD知識や操作能力が問われる試験なため、取得することでCAD分野で即戦力な人材であることを証明できます。等級は准1級、2級、3級、4級の4段階です。
参考:一般社団法人 全国建築CAD連盟
どんな仕事で役立つ?
建築CADの資格が役立つ職種は、主に以下の3つ職種が該当します。
・CADオペレーター
・設計士
・建築士
活躍できる企業は設計事務所、不動産会社、ハウスメーカーなど建築業界が中心です。持っているだけで就職や転職に大きく有利になるわけではありませんが、CADが使えるというだけでも就職の選択肢は広くなります。
資格を取得するメリット
建築CADを取得することによって、自身が実務レベルの設計図面を作成できることが証明されます。等級の高い試験に合格すれば就職や転職活動を有利に進める材料にすることもできるでしょう。建築業界での採用率を上げられるのが資格を取得する上での大きなメリットです。
ただし、就職や転職に有利な資格という側面では、最低でも2級以上の資格が必要となります。試験を受ける人の多くは就職や転職活動を有利に進める材料としているため、受験者数も2級試験が最も多いです。
使用するCADソフト
どの等級の検定試験でも、以下の2つの受験方法から1つを選択して受験します。
①試験会場に設置されたパソコンを使用
②CADソフトをインストールした自身のノートパソコンを試験会場に持参
試験会場のパソコンを使用する場合、実施会場毎で用意されているCADソフトが違います。以下は各試験地域の会場で使用されているCADソフトです。
出典:「実施要項(一般受験)」(一般社団法人 全国建築CAD連盟)
試験会場やソフトは変更される可能性があるため、受験前に公式ホームページで確認しておきましょう。
建築CAD検定試験の概要と難易度
試験は全てパソコンを使った実技試験のみです。試験時間は3級で2時間、2級で5時間、准1級で4時間10分と決まっています。課題内容や問題数、合格基準は受験する等級によって違うため、試験概要は事前に確認したうえで申し込むようにしましょう。
過去10年間の合格率は以下の通りです。
受験方法
受験には一般受験と団体受験の2種類があります。一般受験とは個人で申し込む形式の受験方法です。設けられた申し込み期間内に公式ホームページにて申し込みを行います。団体受験とは、試験認定校に認定された教育機関に通う学生を対象とした受験方法です。
使用するCADソフト
使用できるCADソフトは汎用タイプのみに限られます。代表的なソフトは以下の6つです。
・AutoCAD
・Jw_cad
・Vectorworks
・V-nas
・DraftSight
・DRA-CAD
なお、自動生成機能を搭載した、特定の業種に特化した専用CADは受験に使用できません。上記以外のソフトを使用する予定なら、事前に公式ページにて問い合わせしておくようにしましょう。
4級
4級のみ高校生の団体受験のみ実施しており、一般受験はできません。大学生や社会人の場合は3級が最も低い等級となります。概要は以下の通りです。大学生や社会人の場合は3級が最も低い等級となります。
試験内容はCADの基礎的な操作能力に関する実技試験です。詳細な指示を元にCADシステムで正確に設計図を描く能力を有するかを問われます。問題の難易度は実社会で最低限通用するレベルです。指示を理解して図面を正確に描ける理解力と操作能力があれば問題ありません。平均合格率は約90%です。
3級
3級試験は4級試験より若干難易度が上がるものの、問われるスキルレベルは4級と大差ありません。試験概要は以下の通りです。
これから建築業界に就職、転職しようと考えている人や図面設計業務に携わる人のスキルチェックとして受験されます。与えられた指示を読み取り正確に図面を描ける技術レベルがあれば問題ありません。平均合格率は約70%です。
2級
2級試験からは、求められる技術力が実務レベルにまで上がります。試験の概要は以下の通りです。
2級試験では図面のラフスケッチから一般建築図面を描く能力があるかを問われます。4級、3級試験との最大の違いは、実務レベルのCADスキルが求められる点です。基礎的な建築知識を持っていることが前提として問題が作成されているので、合格することで自身が実務レベルでCADが扱える即戦力な人材であることをアピールできます。平均合格率は約60%です。
准1級
准1級は建築CAD検定試験の中で最上位の等級です。2〜4級試験と若干の違いがあるので、他の試験と同じ感覚にならないよう注意して試験に臨まなければなりません。概要は以下の通りです。
准1級試験では、建築図面設計に関する総合力の高さが問われます。実務レベルのCAD操作能力だけでなく、設計者の意図を読み解く能力や、経験に基づいたCADシステムの構築技術など、CAD業務に関して精通した知識やテクニックが必要です。准1級だけ他の試験よりも合格率が圧倒的に低水準で、平均合格率は約20%まで落ちます。
建築CAD検定試験の勉強方法
建築CAD検定は問題文と参考図面を見ながら作図をしていく実技試験なため、各級の出題内容に合わせた作図の反復練習が有効とされています。そのため、参考書を読み込むより、実際にCADを用いながら問題をできるだけ多くこなすのが一番の近道です。
問題集・過去問
問題集や過去問を扱う場合は、問題に慣れることと作図スピードのアップに努めましょう。制限時間が限られている建築CAD検定試験では、作図スピードの遅さは命取りです。同じ問題でも反復して解き、問題に慣れてから受験に臨むのが効果的です。
問題集を購入するなら、前年度試験の問題集はもちろん、過去3年分まで遡って問題を解くようにしましょう。より多くの問題に触れることで、作図の対応範囲が広がります。ただし、10年前の問題など、あまりにも古い問題は情報が古く参考になりにくいため避けるのがベターです。
講座
初めて建築CAD検定試験を受験する場合や、CADの基本知識から学びたい場合は講座の受講も効果的です。問題集や過去問と違い、体系的に試験対策ができ、わからない点があれば講師に質問できます。近年ではインターネットで受講できる講座もあるので、仕事で受講する時間がない人でも安心して勉強できます。
独学でも大丈夫?
建築CAD検定試験は実務レベルのCADスキルが求められる実技試験なため、独学での合格は難しいとされています。独学でカバーできる範囲は基本操作を問われる4級、3級が限度といえるでしょう。最低限の建築知識も必要とする2級以上を目指すなら独学は厳しいといえます。
建築CAD検定試験以外の資格
CADに関する資格として、建築CAD検定試験以外に下記の3つの資格があります。
•cad利用技術者試験
•オートデスク認定資格プログラム
•Vectorworks操作技能ベーシック認定試験
CAD利用技術者試験とは、一般社団法人コンピューター教育振興協会(ACSP)が主催するCADシステムに関する検定資格です。
国家資格ではないですが業界内では知名度が高い民間資格で、CAD(computer aided design)コンピューターによる設計支援の技術向上を目指します。
オートデスク認定資格プログラムは、AutoCADを製造しているAUTODESK社が認めている評価です。このプログラムはAutoCADを設計した会社AUTODESKによって作成され、かなり尊重されています。
Vectorworksは、インテリアデザインに特化した優れたCADプログラムであり、室内家具のプロを目指す方にお勧めの操作スキル認定試験も提供しています。